松くい虫の被害対策「薬剤を幹に注入して松枯れ予防」

写真は松くい虫対策として、当社圃場の松に薬剤を注入している様子です。

松くい虫による松枯れは、全国各地で問題になっています。福井県でも、越前加賀海岸国定公園や緩衝緑地帯などの松林は、ほぼ壊滅的な状態です。

特に、高波や潮風から海沿いの暮らしを守る目的をもった海岸林では、松の木以外に役目を果たす樹木がないので深刻です。

もちろん役所も対策はしているのですが、松くい虫は駆除が難しい害虫なので、今も被害は拡大しています。そんな厄介な松くい虫ですが、薬剤で予防できるのでお話ししますね。

松くい虫の予防について

松くい虫とは

松くい虫とは、「マツノザイセンチュウ」という線虫のことで、大きさは1mm足らずと小さく、松の幹の中で増殖します。この線虫が樹幹内の細胞内容物を摂食することで、樹液上昇の阻害が起こり松が枯れる要因となるようです。

松くい虫が大量に増殖した松は、95%以上の確率で枯れるので深刻な問題になっています。

カミキリ虫が松くい虫を運ぶ

松くい虫(マツノザイセンチュウ)は、自力で他の松に移動できません。松くい虫は、「マツノマダラカミキリ」と言うカミキリ虫(昆虫)に寄生することで、松から松に移動します。

マツノマダラカミキリは、健全な松の樹皮を食害するのですが、この時に寄生していた松くい虫が、松の木に侵入します。

マツノマダラカミキリの駆除は難しいが食害は防げます

夜行性で他所から飛来するマツノマダラカミキリを、タイミングよく殺虫剤散布で駆除するのは困難です。ただ、マツノマダラカミキリの食害を防ぐ薬剤(スミパイン等)がありますので、カミキリ虫の成虫が活動する5月下旬以降に薬剤散布をして、食害(松くい虫の侵入)を防ぐことはできます。

薬剤を幹に注入して松枯れ予防

松くい虫の予防に効果的なのは、マツノザイセンチュウの増殖を防ぐ薬剤を、樹幹に注入する方法です。先にお話ししたとおり、松くい虫は大量に増殖することで松を枯らしますので、増殖を防げれば枯れないと言う発想です。

写真の事例では、マツガードという樹幹注入剤を加圧注入容器に入れて、LPガスで強制的に加圧注入しています。薬剤注入の時期は、松ヤニが出にくい12月~2月が適期で、1回の注入で3年~6年間は被害防止効果が持続します。

ただ、松くい虫用の樹幹注入剤は薬害が出やすいので、元気な松に適量注入が原則です。また、樹幹注入は予防ですので、松が健全な時に接種しないと意味がありません。現在、松くい虫で枯れ始めた松は直す方法が無いので、早めの予防をおすすめします。

マツノザイセンチュウの増殖を防ぐ薬剤の樹幹注入と、マツノマダラカミキリの食害を防ぐ薬剤散布を兼用して、みなさまの大切な松を、松くい虫から守ってくださいね。

最後に、松くい虫被害は全国で問題となっているため、市区町村によっては松くい虫防除の「補助金」がでる地域があります。補助金が利用可能なラッキーな方は、是非この機会に手当を活用して、松くい虫対策をしましょう。